想定範囲内のできごとであれば対処はしやすい。
だがこの想定範囲というキャパは人によって事象によって大きく違ってくる。
ひとつここでトイレのつまりに関して。
昨日、先日トイレが4つある大きなお家のつまり治しに行って来た。
実はトイレが詰まった、治してくれという依頼は土曜日にあったのだが、私はそのとき埼玉にいたので、誰か他の者でよければすぐに行かせると応じると、
いや、トイレはあと3つあるから火曜日でもいいと言ってくれた、半年前にも私が治しているし、他の者だと一から説明しなくてはならないし、プライベートな部分を見られるのは誰でもあまり気持ちのいいものではない。気心知れた私が良い。
とかく水道屋も職人という性質上、トイレがつまったといっても、家中の全ての水周りを配管を調べようとするし、トイレやバスルームは寝室とともにプライベートな部分だ。何人もの水道屋ふぜいには見せたくないだろう。
そして下水の配管など汚いとされる部分も、男はぜんぜん気にしないが、女性は自分の掃除してない部分が見られるようで嫌な場合が多い。
急な来客が来たときに、掃除が行き届いていない家を見られるのは嫌だ、
ましてやトイレが詰まったので治してくれと依頼するにしても、他人に自分や家族の汚物を見られるのは我慢できないこともあるだろう。
まあ、そんなことは気にもかけない女性も多くはなってきているが。
このおうちのご主人も奥様思いで、そういう女性の気持ちも察してもいるので、私の手の空いたときでいいといってくれた。
トイレの詰まりなおしで詰まったトイレと玄関までの経路を行き来するのは想定範囲だが、
詰まっていないほかのトイレや台所、風呂場、洗面所、その他すべての水周りを見られるのは想定範囲外だ。
特に女性は男性修理業者などに家中みられるのは我慢できない人も多い。
当社でもそういう観点から女性の技術者を育てようと検討したこともあるが、
まず、トイレの掃除まではOKだが汚物の詰まりまでいくと引いてしまうケース、
女性技術者をひとりで男性宅に出動させられるか?
50kgある便器やバスタブを一人で持ち上げられるか?
想定外のことが起きた場合、(100現場があれば100とおりの処置、一現場ごとにみな違う)特に力仕事への対処と考えると女性技術者はこの仕事には難しいことも多い。
話は変わるが、
汚水と雑排水は分けて配管することが多いし、私もこの手法を推奨する。
他にもあくまでも工事作業性重視で近くにあるものは全て合流させながら外まで配管するやり方。
1階と2階3階とフロアごとに分けるだけで汚水と雑排水は分けては考えないやり方。
すべて一長一短があり、全てはその建物の設計段階でどこまで使用状況を考えられるかだが、
私が汚水と雑排水を分けて配管する方法(いちばん古くから使われている方法)を薦めるのは、トイレが詰まってしまったときに台所や、バスタブ、洗面所にウンチが逆流してきた場面を何度もみてきているからだ。
ウンチがあふれた台所なんて二度と使いたくない、ウンチの逆流したバスタブなんか二度と入浴できないと家を売却してしまったのを見ているからでもある。
台所にウンチがあふれるのは想定範囲ですか?
バスタブがウンチまみれなのは想定範囲内ですか?
そんなこと設計士は言わないですよ、
そんなばかみたいだけど、想定しなきゃいけないことを真剣に言えるのは水道屋だけですよ。
私は設計士ではないので、出来上がってしまった建物のつまりや水漏れ、老朽化による配管替えの際にしか、お客様にアピールできないが、
今度建て直すときにはぜひ知恵をお借りしたいわとよく言われる。
しかしこれも理論的には列挙できない、あくまでも経験値によってこれは良くないとは言えるが・・・・・では設計士は聞く耳もたないだろう。
ましてや日本の住宅は狭くて高価な土地にいかに効率よく建物を建てるかが大きな課題であり、水周りも見てくれと表面上の使い勝手が良さそうであれば大半はお客様を満足させられる。
しかし、住まいというものは住んでみて初めて解る、
水周りは不具合がおきて初めて解る。
流れにくい、詰まりやすい、詰まったときの修理がしにくい、万一詰まったときに家中臭くてどうにもならないでは、せっかくの高価な邸宅もだいなしである。
世の設計士さん、工務店さん、よく考えて配管してくださいね。